Hatena Blog版・筑西歳時記~ここは茨城、筑西(旧下館)市

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板谷波山生誕150年・検索ファイルVol.7文化財と波山(広報筑西People 令和3年11月号)

こんにちは、みなさんお元気ですか?
さて、ここ茨城県筑西市は、陶芸家・板谷波山先生(文化勲章受章者、茨城県名誉県民、筑西市名誉市民)の出身地です。そして来年令和4年は、その波山先生の生誕150年という節目の年。これを記念して、市の広報紙Peopleが波山先生の記事を連載しています。今回はVol.6に続いて7をご紹介します。

広報筑西People令和3年11月1日号掲載

シリーズ 板谷波山 生誕150年
一木努(いちきつとむ)の
波山検索ファイル Vol.7文化財と波山

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毎年11月1日から7日までの1週間は、文化財保護強調週間です。
波山に関わる文化財で思い浮かぶのは、茨城県指定文化財の波山の生家、そして国の重要文化財となった波山の名品2点でしょうか。
でもこの町には波山と所縁(ゆかり)のある文化財が、いろいろあるのです。

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下館小学校の北西側、現在は一部が配水場となっている下館公園は、かつては桜の名所として知られていました。上は、昭和の初期に、ここで撮影された写真です。
居並ぶ坊主頭の少年たちではなく、後ろの鐘楼にご注目。

吊り下げかれている鐘は、下館城主の水谷勝俊(みずのやかつとし)公が定林寺(じょうりんじ)に寄進したもので、なんと室町時代の作。江戸時代まで撞鐘(つきがね)として近郊に時刻を告げていたと伝えられています。
昭和6年(1931)下館尋常高等小学校の「郷土読本」には、「天平式の古鐘で国宝にもなる程の稀に見る名高い鐘で、本町出身の日本でも有名な陶磁器の名人帝国美術院(帝室技芸員)の板谷波山氏などが保存法に就いて研究しているという鐘である」と書かれています。
その成果があったのでしょう。定林寺境内に移設され、国宝にはならなかったものの、茨城県文化財としての指定を受け、現在は本堂内に安置されています(写真下)。

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一方、波山の仲立ちで本当に国宝となったのが中館観音寺(*ブログ管理者注:正式名は施無畏山延命院観音寺)の「延命観世音菩薩像(えんめいかんぜおんぼさつぞう)(*ブログ管理者注:国指定名は「木造観音菩薩立像〈(寺伝延命観音像)/(観音堂安置)〉」)(写真下)です。

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波山はこの洗練された格調高い仏像の調査を、東京美術学校彫刻科の同級生である新納忠之介(にいろちゅうのすけ)に依頼します。
新納は波山の生涯の親友であり、我が国の彫刻調査修理の第一人者でもありました。実地検分の結果、鎌倉時代の貴重な彫刻として大正11年(1922)国宝に指定されたのです。
戦後、重要文化財に指定替えされましたが

今の境内に建つ「国宝記念碑」や「国宝中館観世音」の石碑が国宝時代を物語ってくれています。
波山は神社にも足を運びます。羽黒神社境内にある愛宕神社のご神体が見当たらないので、捜してもらったところ、バラバラの状態で風呂敷に包まれ発見されました。しかも一部は失われていたのです。
波山は復元を要望、木彫の神像は京都の国宝美術修理所で補修された後、昭和38年(1963)県の文化財となりました。それが鎌倉時代末期の作、愛宕明神立像(あたごみょうじんりゅうぞう)(写真下)です。

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愛宕神社羽黒神社建立以前からの鎮守で、このご神体こそが古くからの地域の守り神だったのです。
優れた鑑識眼を持った波山は。その眼を故郷の歴史遺産にも注ぎ、文化財指定への道を拓いてくれました。それは、自分の支となった故郷の文化を大切にしたい、故郷に受け継がれてきた宝物を次の世代に残したいという願いからだったのでしょう。
来年の波山生誕150年記念展では、そんな波山の一面もご紹介できそうです。
今回登場のいくつかも展示予定です。期待ください。
文 下館・時の会代表 一木努さん

十一月霜月
文・学習院大学教授 荒川正明(あらかわまさあき)さん
葆光彩磁珍果文花瓶(ほこうさいじちんかもんかびん)
板谷波山作 大正6年(1917年)
高さ51.0㎝ 胴39.8㎝
泉屋博古館東京蔵 撮影:尾見重治

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来年の波山生誕150年の展覧会の「超目玉」と言えば、やはり重要文化財の「葆光彩磁珍果文花瓶」です。おそらく日本の近現代のやきもの中で一番値段の高いもので、バブル期には、時価5億円程とも言われました。技術の完璧さ、表現の奥深さ、品格の高さ、

まさに20世紀における世界の最高峰に君臨する作品なのです。
大正6年(1917)の日本美術協会展で最高賞の金牌第一席を受賞。波山の出世作となった記念碑的作品です。大阪の住友家の当主春翠(しゅんすい)が買い求めたもので、平成14年(2002)には近現代陶芸作品として、初めて重要文化財の指定を受けました。
ここで自慢話を少々。私が出光美術館学芸員時代に、見たこともない波山の素描を発見。その素描に「大阪住友男爵家へ売却ス」と波山のメモ書き。京都の住友家の美術館へ問い合わせところ「そんな作品はない」とのこと、残念。しかしその一週間後、「美術館ではなく、住友家の本家に所持されていました」との連絡。喜び勇んで京都へ行き、この作品と感動の対面。その後、本作は展覧会で公開、万人にその素晴らしさが認められていきました。
なんと傑作の栄えある第一発見者はこの私なのでした・・・。
【問】しもだて美術 電話0296-23-1601

波山ニュース
板谷波山記念館 秋季特別展開催中

板谷波山記念館では、12月5日(日)まで、令和3年度秋季特別展を開催中です。今回の特別展は、東京田端の窯で発掘された初公開を含む陶片を展示しています。
波山の命日10月10日には、波山研究の第一人者、学習院大学教授の荒川正明(あらかわまさあき)さんと下館・時の会代表の一木努(いちきつとむ)さんによる特別講演が開催され、多くのファンが波山の魅力に触れました。ぜひ、当記念館で貴重な展示品をご覧ください。
(写真左:荒川さん、右:一木さん)


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【問】板谷波山記念館 電話0296-25-3830

板谷波山生誕150年記念事業実行委員会からお知らせ

来年4月に開催する展覧会や作品などの最新情報をSNSで発信していますので、のぞいてみてください。
また、波山生誕150年記念事業連携企画「筑西財宝伝!~”陶聖“が残した幻の花瓶を探せ!~」を開催します。詳しくは裏表紙を。f:id:UncleAlbert:20211124072254j:image

というわけで、広報筑西Peopleの板谷波山生誕150年記念の連載記事は、Vol.8に続きます。

 

 

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