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板谷波山生誕150年・検索ファイルVol.9すみつかれ (広報筑西People令和4年2月)

こんにちは、みなさんお元気ですか?
さて、ここ茨城県筑西市は、陶芸家・板谷波山先生(文化勲章受章者、茨城県名誉県民、筑西市名誉市民)の出身地です。そして今年(令和4年)は、その波山先生の生誕150年という節目の年。これを記念して、市の広報紙Peopleが波山先生の記事を連載しています。今回は新春対談に続いてVol.9をご紹介します。

広報筑西People令和4年2月1日号掲載

シリーズ 板谷波山 生誕150年
一木努(いちきつとむ)の
波山検索ファイル Vol.9すみつかれ


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「しもつかり」「しもつかれ」あるいは「すみつかり」など、呼び方はいろいろありますが、ここでは「すみつかれ」でいきましょう。
人気が分かれる当地方の郷土料理「すみつかれ」が、全国的に知られるようになったのには、波山も一役買っていたのです。

今年の初午は2月10日(木)。
以前はこの季節になると荒物屋さんの店先に「鬼おろし」が登場したものですが、下の写真のような光景どころか、お店さえなくなってしまいました。

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でもたぶん、今年も市内各所のお稲荷さんには、赤飯とともに藁苞(わらつと)に包まれた「すみつかれ」が、供えられることでしょう。

さて、人形作家で料理研究家の阿部(あべ)なをさんをご存じでしょうか。テレビの料理番組などで長年活躍し「すみつかれ」を広く紹介してくれた人です。
阿部さんが書かれています。
「48歳のとき、まったくの素人であった私が、食堂を始めることになりました。その時一番応援してくださった陶芸家の板谷波山先生に教えていただいたのが、このしもつかれ。私の郷土料理の原点でもあります。(中略)
調味料は一切使わないのに、鮭の塩味と粕の甘みがなじんで、じんわりとおいしくなってきます。(中略)
私は先生直伝のこの作り方こそ正統派、と自負しております」(『阿部なを・河合真理(かわいまり)の健康おかず』中央公論社)。
別の本には、波山の言葉が綴られています。
「郷土料理の神髄は細やかな思いやりなくしては、粗末な材料のめいっぱいの味を出させることはできない。また、祖先の大切なかたちや味は伝えるものによって変わってゆくものだから、この機会に自分の「しもつかり」を貴方に覚えてもらいたい」(『小鉢の心意気』筑摩書房)。
そして、阿部さんの郷土料理の店が開店した時、波山からお祝いが届きます。
「波山先生は大変まめな人で、蛤貝(はまぐりがい)に竹の柄を細い針金でまとめて作ったしゃもじを何本もくださいました。(中略)しもつかりを盛った鉢に添えて偲んでおります」(同前)。
それが、下の写真です。

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さすが波山先生、やることが違いますね。針金がないので改良型でしょうか。柄の部分に、茶杓(ちゃしゃく)を作っても名人級という波山の技が偲ばれます。
ところで、阿部さんに「すみつかれ」を丁寧に伝授された波山は、東京田端の自宅でも味わっていたのでしょうか。
お孫さんの村田(むらた)あき子さんとお二人のお手伝いさんに伺ったところ、食卓に上がったことはなく、(えっ!?)、何もおっしゃられず、出されたものを何でも召し上がっていらした、とのことでした。

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波山を囲んで、左から村田あき子さん、渡辺朝子(わたなべあさこ)さん、長塚(ながつか)アイ子さん
文 下館・時の会代表 一木努さん

 

二月 如月
文・学習院大学教授 荒川正明(あらかわまさあき)さん

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葆光彩磁瑞花鳳凰文様花瓶(ほこうさいじずいかほうおうもんようかびん)
板谷波山作 大正12年(1923)頃
高さ26.5㎝ 胴径24.3㎝
個人蔵

この作品は、これまで全く知られず、展覧会にも出たこともなく、突然世の中に現れました。こんなものがまだまだ隠れている国、それが日本です。
個人の収蔵家が大切にされてきて、ある古美術商さんのご尽力で、みなさんにもご覧いただくこととなりました。
じつはこの作品を直に見たとき、腰が抜けそうに・・・・・・。葆光彩磁の大名品「葆光彩磁瑞花鳳凰文様花瓶」(出光美術館蔵)と瓜二つ。大正12(1923)年、摂政宮(せっしょうのみや)(後の昭和天皇)の御成婚を祝し、久邇宮(くにのみや)家の依頼によって制作されたものでしょう。
この花瓶がつくられたのは百年前の関東大震災があった年。それから、太平洋戦争を無事潜り抜けてきましたが、花瓶の持ち主は、さぞかし大変な思いで守り抜いてきたことでしょう。4月からの波山展では、しもだて美術館に展示させていただくことになりました。
さて、この花瓶には雌雄番(つがい)の鳳凰が表・裏に配されています。上の写真は、羽を大きく広げ飛揚(ひよう)する雄で、まるで手塚治虫の描いた火の鳥のようですね。
この鳳凰は、奈良県東大寺にある天平時代の鳳凰をモデルとしたものです。鳳凰が素敵なマントを羽織り、大空を舞うかのように見えませんか。
【問】しもだて美術館  電話0296-23-1601


波山ニュース
「波山の夕べ」中止のお知らせ
毎年、板谷波山の誕生日3 月 3 日に開催していました「波山の夕べ」は、現下の状況から、今年も中止させていただきます。再開できる日を、もうしばらく、楽しみにお待ちください。
下館・時の会

板谷波山記念館・所蔵品展
板谷波山記念館では、板谷波山とは何者か?に焦点を当てた所蔵品展を開催中です。
波山作品から見る時代背景による影響や、確立した技法についてなど「人間・板谷波山」について展示しています。
会期:3月31 日(木)まで
休館日:月曜・3月22 日(火)
新型コロナウイルス感染防止のため、2月13 日(日)まで休館となります。
再開後のお越しをお待ちしています。f:id:UncleAlbert:20220222195103j:image

【問】板谷波山記念館 電話0296-25-3830


というわけで、広報筑西Peopleの板谷波山生誕150年記念の連載記事は、Vol.10に続きます。

 

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