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板谷波山先生「幻の飛鳥山焼」と渋沢栄一翁

こんにちは、みなさんお元気ですか?

さて今回は、昨年(令和4年)書いた記事「『生誕150年記念 板谷波山の陶芸』泉屋博古館東京」の続きです。

陶聖・板谷波山先生(陶芸家初の文化勲章受章者)の展覧会「生誕150年記念 板谷波山の陶芸~麗しき作品と生涯~」の会場である、東京・六本木の泉屋博古館東京を後にした わたくし臣(しん)。JR下館駅(茨城県筑西市)への帰途、とある場所に立ち寄りました。

それがこちら↓

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JR王子駅を下車して、すぐのところにある↓

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飛鳥山です↓

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飛鳥山は江戸時代の享保5年(1720)、8代将軍徳川吉宗が桜を植えて以来の桜の名所。実はここ、板谷波山先生に少しだけ関係があります。

明治5年(1872)年に茨城県真壁郡下館城下(現在の筑西市)に生まれた板谷波山先生は、東京美術学校(現在の東京芸術大学)で岡倉天心高村光雲らに学びました。
卒業後は石川県工業学校の教諭となりますが、明治36年(1903)31歳の時、陶芸の道に進むため同職を辞し、妻子と共に上京。滝野川村(現在の東京都北区田端)に粗末な住家と当時最新式の窯を築くものの、自ら「板場破産」と自嘲する程の貧しい生活が続きます。
この時期波山先生は生活のため、近くの飛鳥山に集まる花見客目当てに、杯や徳利を作って売り出した事があります。いわゆる「飛鳥山焼」です。

飛鳥山焼陶片」(「生誕150年記念 板谷波山の陶芸」図録より)↓

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ちなみに波山先生が飛鳥山焼を売り出した飛鳥山は現在、区立公園になっています。
そしてこの飛鳥山は、令和3年NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公で、近代日本経済の基礎を作った澁澤栄一翁(以下、澁澤榮一については渋沢と表記)の飛鳥山邸宅があった場所でもあります。

園内の渋沢栄一像↓

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渋沢は明治12年(1879)、飛鳥山南東側の敷地に別荘を構え、明治34年(1901)から昭和6年(1931)に死去するまで、本邸として使用していました。渋沢の遺言により邸宅の寄贈を受けた龍門社(現在の渋沢栄一記念財団)は、昭和24年(1949)、渋沢栄一顕彰事業の基金とするため邸宅跡地を売却。飛鳥山公園はそれらを含める形で拡張されました。
現在公園内の旧渋沢庭園には、国指定重要文化財である大正期の2つの建物「晩香廬(ばんこうろ)」と「青淵文庫(せいえんぶんこ)」が残され、渋沢史料館も建っています。

茶室「晩香廬」(大正6年)↓

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書庫「青淵文庫」(大正14年)↓

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渋沢史料館(平成10年)↓

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明治5年(1872)生まれの波山先生が、貧しさの中で飛鳥山焼を売り出したのは30代中頃。対して天保11年(1840)生まれで32歳上の渋沢は当時60代後半で、日本経済界の最重要人物です。
波山先生は有名人の渋沢を知っていたでしょうが、渋沢は波山先生の存在を認識していなかったかと思われます。万が一飛鳥山ですれ違う事があっても、互いに声をかける事は無かったでしょう。

なお、貧しい生活を送る中でも波山作品に対する評価は確実に高まり、明治39年(1906)日本美術協会展での初窯作品入賞に始まって、明治40年(1907)東京勧業博覧会三等賞、明治42年(1909)日本美術協会展では第四部工芸委員になり彩磁椿花文花瓶を皇后陛下に献上、明治43年(1910)第2回東京芸術及工芸展では監査員、明治44年(1911)東京勧業博覧会では陶磁七宝部委員となり白磁八ツ手彫花瓶が東京府買上げ、皇后が行啓された第2回全国窯業品共進会会場では夫婦で彩磁菊花図額皿を御前制作するまでになります。

「彩磁菊花図額皿」(明治44年、しもだて美術館蔵)↓

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東京美術学校時代から蓄積された知見と努力、卓越した技術により自身のキャリアを花開かせた波山先生。飛鳥山焼が継続する事は無く、幻の焼き物となりました。

 

というわけで、板谷波山先生「幻の飛鳥山焼き」と渋沢栄一翁のお話でした。

 

北区ホームページ飛鳥山公園

公益社団法人渋沢栄一記念財団

 

■生誕150年記念 板谷波山の陶芸~麗しき作品と生涯~

◇令和4年4月16日(土)~6月19日(日)しもだて美術館板谷波山記念館、廣澤美術館(筑西市)*終了

◇6月25日(土)~7月24日(日)石川県立美術館(金沢市) *終了
◇9月3日(土)~10月23日(日)泉屋博古館(京都市) *終了
◇11月3日(木・祝)~12月18日(日)泉屋博古館東京(東京都港区)*終了

◇令和5年1月2日(月)~2月26日(日)茨城県陶芸美術館(茨城県笠間市)

 

しもだて美術館
板谷波山記念館公式サイト
廣澤美術館 ザ・ヒロサワ・シティ
石川県立美術館

泉屋博古館

茨城県陶芸美術館

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