Hatena Blog版・筑西歳時記~ここは茨城、筑西(旧下館)市

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小さな博物缶「企画展・板谷波山先生入門」

こんにちは、みなさんお元気ですか?

さて先日のこと、地元・茨城県筑西市の市役所を訪ねたところ・・・
一階エレベーター横の小さなスペースに、こんな展示がありました↓

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【なかみがギュッとつまった「ちいさな博物缶」】*館ではなく缶です。
展示されているは、ここ筑西市が誇る陶芸家・板谷波山先生(工芸界初の文化勲章受章者、名誉市民)の陶片と未完成作品です。

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板谷波山とは
板谷嘉七(かしち、波山)は、明治5(1872)年3月3日、茨城県下館町(現・筑西市)に生まれました。
明治22(1889)年には、東京美術学校(現・東京芸術大学)彫刻科に入学。校長であった岡倉天心(おかくら てんしん)や、彫刻科を指導していた高村光雲(たかむら こううん)などに学びます。
卒業後は、新設校・石川県工業学校の彫刻科主任教諭となりました。同校は、西洋の窯業(ようぎょう)技術を取り入れ、実験や研究を行っており、波山は新しい釉薬の研究などに着手します。当時波山は、故郷の勤行(ごんぎょう)川にちなみ「勤川(きんせん)」と号していました。
明治36(1903)年、東京・田端に築窯(ちくよう)したことを機に、故郷の筑波山にちなんで「波山」と号し、陶芸家としての活動を本格的に始めますが、経済的な理由から東京高等工業学校窯業科の嘱託教師も兼務していました。
やがて完成した初窯の作品により、波山はたちまち陶芸界の有名人となります。
その特徴は、アール・ヌーヴォーや東洋の伝統的デザインを踏まえた独創的な図案と、磁器の素地の表面に描画・装飾し、葆光釉(ほこうゆう)をかけて艶消しを行うことで、淡い光を表現する「葆光彩磁(ほこうさいじ)」の手法にありました。


波山は自らの作品に関しては一切の妥協を許さず、焼き上がったものでも、気に入らないとすべて叩き割ったと言われています。現在市役所に展示されているのは、何らかの理由で世に出ることの無かったの作品の陶片なのです。
展示は撮影可だったので、写真を撮らせていただきました。

◆氷華磁扶桑延壽文花瓶 ひょうかじふそうえんじゅもんかびん(陶片)
昭和初期 高さ33.4cm
板谷波山記念館蔵↓

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釉はやや青味を帯びており、表面には貫入が入っています。氷華磁は、昭和初期を代表する作品です。


◆葆光彩磁蔓草文花瓶 ほこうさいじつるくさもんかびん(陶片)
大正時代中期 高さ16.0cm
板谷波山記念館蔵↓

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葆光釉はマット釉の一種で、艶消しの葆光釉によって、薄絹を透かしたような淡い光を放つのが特徴です。


◆彩磁仙桃文花瓶 さいじせんとうもんかびん(陶片)
昭和20年代 胴径14.6cm
板谷波山記念館蔵↓

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胴部に仙桃文がえがかれており、両耳は鯉の形をしています。結晶釉により、表面に霜が降ったように見えます。


◆「波山」銘 落款 板谷波山記念館蔵↓

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年代不明。作品の底面に落款が押されています。


◆左手前:白磁捻耳香炉 はくじねじりみみこうろ(陶片)
昭和20年代 口径11.7cm
袴腰香炉であり、釉調はおおむね良好です。板谷波山記念館蔵

◆右奥:捻耳香炉 ねじりみみこうろ(生素地)
昭和20~30年代 口径11.5cm
板谷波山記念館蔵↓

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というわけで、板谷波山先生の陶片展示、実物については今回はご紹介したもので全てですが、他にパネルの解説などもありましたので、機会があれば、そちらの方も記事にさせていただきたいと思います。

筑西市ホームページ
板谷波山記念館公式サイト