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板谷波山記念館「ちいさな企画展 波山さんからの便り」

こんにちは、みなさんお元気ですか?


さて突然ですが、わたくし臣(しん)のところへ、茨城県筑西市出身の陶芸家・板谷波山先生(工芸界初の文化勲章受章者、茨城県名誉県民、筑西市名誉市民)からハガキが届いたので、ご紹介します↓

 

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実はこれ、波山先生からのハガキを模した板谷波山記念館「ちいさな企画展 波山さんからの便り」の案内状。
板谷波山記念館は、波山先生の功績を顕彰するため整備された施設で、茨城県指定文化財(史跡)である波山先生の生家や東京田端の工房から移築した窯、作品や資料を紹介する展示室などからなっています。


今回の「ちいさな企画展 波山さんからの便り」は、当初、2019(令和元)年9月26日(木)から12月22日(日)まで開催予定でしたが、好評につき期日を延長して現在も展示中です。


こちらが展示館とその内部(波山記念館は写真撮影可)↓

 

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以下、展示内容の一部をご紹介させていただきます↓

 

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ちいさな企画展 波山さんからの便り

 

波山先生が生きた時代には、スマホはもちろん、携帯電話もファックスもありませんでした。
固定電話でさえ、先生が鳩杖の贈呈を始めた昭和8年を例にとれば、下館町の総戸数約2,500戸に家庭電話が約300台。およそ8軒に1台といったところでした。
通信手段はハガキや手紙、時に電報ですから、波山先生も事あるごとに手紙をしたためています。
しかも、かなりの筆まめといっていいでしょう。お礼状やお祝い、お見舞いやお悔やみ、そして依頼状や案内状等々、多くの便りが見つかっています。
それは受け取った家々で、代々「波山さんから頂戴した手紙」として、ずっと大切に保管されてきたお蔭。
残された筆跡、文面からは、筆をとる波山先生の姿が浮かび上がり、その時々の先生の思いも伝わってきます。
今回は、現存する先生の便りの中から、ふるさと下館の人たちに届いたものを少しだけ、ちいさな企画展として壁面を使ってご紹介します。
ガラスケースの中の波山作品とともに、人柄が滲み出る波山さんからの便りを味わっていただき、手書きでの便りがめっきり減った現在、懐かしい「手紙文化」の世界も楽しんでいただきましょう。

 


祇園ばやし】

 

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この暑中見舞いへの返信は、昭和30年8月、下館の親戚宛てに書かれたもの。波山83歳。
下館の祇園祭をこよなく愛した波山だが、特に祇園ばやしが大好きで、久々に耳にした囃子の音が昔と異なると感じ、人々を集めて伝授したともいわれている。
写真は、下館会館で地元長老たちの祇園ばやしに聞き入る波山。
便箋の2枚目の冒頭、祭りの知らせを受け、「祇園ばやしの太鼓が耳へ聴こえる様です。」とあるが、こんな感じで筆を進めていたのだろうか。
その後に、子供たちに「水泳等充分御用心」との気遣いも。勝、春は当時13歳、8歳の勝彦、春彦兄弟のこと。名付け親は波山で、その時の手紙も発見されたが、またの機会に。

 

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拝啓炎暑厳しき折柄倍々きげんよく御慶ひ申し上げます
此度は御懇なる厚中御尋ねのお手紙を戴きありがたく存じ上げます
私病気も御蔭を以て 漸く宜き方に向ひ 此頃は朝夕多少時間散歩もいたす様になりました
当然に御地へ参りたく切望し療養いたし居りますから 何卒御休神之程お願いたします
いずれ参旦の節山々御話していたしたく存しおりますから 取急き寸書を以て右御厚礼傍々常々の御無沙汰おわび申し上げます
尚時候柄皆様の御健康をお祈り申し上げます
八月七日 板谷波山
板谷春男様
〃 初子様

 

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下館お祭りの御知らせに 懐かしき昔の事共色々と偲ひ浮べ居り 祇園ばやしの太鼓が耳へ聴へる様です
勝、春、両君 水泳等充分御用心
平石さんもお変りありませんか宜しく御傳えお願いたします

 


【帝展入場券】

 

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昭和8年下館の生家の後継ぎである板谷松男君は東京に遊学中。その下館に波山から届いた手紙。波山は自分のことを「田端」と記している。
その年の帝展に波山は写真の「黄飴磁花文壺」を出品したが、同作品は政府買い上げとなり、現在は東京藝術大学の所蔵となっている。因みに当時波山は、帝展の美術工芸部門の審査主任も努めていた。
入場券をもらった松男君、展覧会に出掛けて、この作品をご覧になったのだろうか。

 

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松男君いつも勉強して居ることと存じます
帝展および美術協会の入場券を各二枚ヅゝ同封にて差上げます
日曜に行って御覧なさい
田端
板谷松男様

 


【男何人女何人】

 

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昭和8年、波山から甥の板谷徳次郎宛ての手紙。
「徳次郎の父、つまり波山の義兄の長寿祝いに、鳩杖を贈りたいので、普段使っている杖の長さを教えてほしい。それとともに下館の80歳以上のすべてのお年寄りに、同じものをあげたいので、男女それぞれ何人の高齢者がいるのか、役場で聞いてもらいたい」との趣旨。
波山は以後19年に亘り、下館のお年寄り数百人へ鳩杖を贈呈し続けた。だれもやったことのないふるさと貢献の大事業、そのスタートとなる記念すべき大切な書簡である。
写真はお年寄りの自宅を訪ねて、鳩杖を贈る波山。

 

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拝啓■
折柄倍御■
奉欽賀候扨而御家
父上様世上も珍しく
八十様以上の御年
を重ねられ誠に御目出
度御事に候間御賀
印(迄)拙作鳩壽杖
差上度只今製作所中
ニ付平常御用ひの
杖の長さ御知らせ被下度
仝時に下館町の八十
歳以上の方へも高齢

 

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祝福の為め同様の杖

作成進呈仕度存候處
甚た御手数ながら町
役場へ御出になり
戸籍課にて八十
歳以上の

 男何人
 女何人
在住せられ候や御尋
被下至急御報賜り
度御社願ひ申上候
孰れ近日罷出べく候處
其節萬樓可申述
先は御毛頭に候へ共
取急き当願用(迄)

 

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如斯ニ候藤田氏
当時候我御尊父様
御初メ皆様御自重
之節呉々も祈上候
二月六日 波山書
板谷徳次郎様


父上様若し御不在にて
杖の長さお分りなき時
は私方にて程善く製作


可仕候處役場の方至急
お知らせ披下度候

 

以上、ここでは3点だけご紹介しましたが、記念館ではその他にも、波山先生からの便りを多数展示中です。
いずれも興味深い内容ですので、ぜひご来場のうえご覧ください。

 

というわけで、板谷波山記念館「ちいさな企画展 波山さんからの便り」のご紹介でした。

 


板谷波山記念館「ちいさな企画展 波山さんからの便り」
期日:令和元年9月26日(木)~12月22日(日)好評につき会期延長中
時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで) 
休館日:毎週月曜日
入館料:200円・団体150円(10名以上)高校生以下無料   
主催:一般財団法人波山先生記念会
問合せ :板谷波山記念館  茨城県筑西市甲866-1(田町)TEL0296-25-3830

 

板谷波山記念館
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